1973年のピンボール

1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)の間にはさまれて一般的には存在感が薄いかもしれない本作ですが、何度読んだか分からないぐらい読み返したほど、個人的には気に入っている一作。
本作全体に横たわる、どこにも行くことのできない悲しさが、なぜか僕を惹きつけます。20歳前後の、端から見ればもしかすると稚拙な主人公と鼠が抱える悲しさは、その年代だけが感じる青い悲しさのように感じます。段々と自分が分かってきて、自分にできることとできないことを知ってしまう、それでも何もせずにはいられない、そんなやり場のなさです。
この悲しさは「風の歌を聴け」から続くものだけど、「羊をめぐる冒険」では冒険的な要素というか、悲しさを越えて何かを追いかける少しばかりの活力のようなものが出てきている感じです。そして、この悲しさみたいなものは、勝手な解釈ですけど「ノルウェイの森」で受け継がれて完結すると思ってます。
初期の作品よりも、中期から後期にかけての「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」が好きという人もいますが、僕は「ダンス・ダンス・ダンス」までの著作が好きです。