リフレクティブ・マネージャー

リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する (光文社新書)

リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する (光文社新書)

東京大学准教授で企業・組織における人々の学習や成長を研究されている中原淳さんと、神戸大学大学院教授でリーダーシップやキャリアについて研究されている金井壽宏さんによる共著です。
リフレクティブとは、直訳すると反射・反映となるようですが、副題に「一流はつねに内省する」とあるように、仕事での成長における内省の大切さを説いた本です。他者と振り返りの機会を持つことで自分を深く知り、成長するにはどうしたらいいのかということが書かれています。
今、僕は大学で卒論を書いているのですが、テーマが「仕事における成長」なので、まるごと参考になる本でした。かといってアカデミックに過ぎず、しかも対象はマネージャーに限らず、さらにはまだ仕事に携わっていない学生も含めて、多くの人に参考になるような内容です。人生のどのタイミングで読んだとしても、読後に大きな影響を与えるだろう、良書だと思います。
かなり内容は濃くて、ほとんどのページで引っかかるポイントがあったんですが、特に印象に残ったのは以下の中原さんが書かれている「持論と棄論はセットである」という節の部分です。

p.162
貴重な経験を積み、十分な振り返りをへてせっかくつくり上げた持論でも、それが絶対化し、安定化し、変わらぬものになったとき、あるいは、いつでも、どんな人にも、どんな状況にも適用されると思い込んでしまったとき、それは「危険な持論」に変貌する。
(中略)
持論は、つねに環境の変化に対して開かれていなければならない。時間がたてば、持論は、いつか必ず新たな現実との間に葛藤を起こす。だから、持論は環境変化に応じて、繰り返しつくり上げられ、また壊される必要がある。その意味では、持論は完成されることはけっしてない。

これに対し、金井さんは次の「ベータ版を改訂する」という節においてこう述べています。

p.163
ただし、私が持論をつくって下さいと言うときは、「ただし、学習は必ず続けて下さい」ともお願いするようにしている。

「持論のベータ版」という表現は言い得て妙だなと思いましたが、つまり自らの持論をつねに疑い、よりよいものにしていくために向上心を持ち続ける必要があるということでしょう。昨日読んだ、人を助けるとはどういうことかと同じく、来年4月に就職を控えてる身として、この時期にこの本に出会えたことを本当に嬉しく思っています。